箱庭WGコアメンバー紹介を始めました。第一回目は久保秋さんです。


箱庭ラボは、新しいブログシリーズ「箱庭WGのコアメンバー紹介」を開始します。これまでのTOPPERS/箱庭プロジェクトの成功は、一緒に汗を流したチームメンバーのおかげです。そこで、これらの技術背景だけでなく、それを支えるメンバーの物語を共有します。第一回目は、久保秋さんです。久保秋さんがどうして箱庭プロジェクトに参加することになったのか、その舞台裏を掘り下げてみました。

久保秋さんのご経歴:

久保秋 真(くぼあき しん)さんは、いま、株式会社チェンジビジョンで、シニアコンサルタントとして活躍中です。専門は、主に、組込み分野におけるオブジェクト指向技術とモデル駆動開発です。これまでの豊富な経験を活かし、数多くの技術者や開発者に教育と支援をされています。また、RubyやC言語の入門書等の執筆も行っています。一方で、プライベートでは、たまのほろ酔い帰宅が話のタネになることも。東海道線で小田原に着くまでの間に眠り込み、予定外の一泊が定番となっています。このような人間味あふれるエピソードも、久保秋さんの魅力の一部です。

インタビュー

今回、久保秋さんのご経歴を拝見しながら、どのような人生を歩んでこられたのか、興味深く質問をさせていただきました。その中で、特に印象に残った重要なポイントをピックアップしながら話を進めたいと思います。

外の世界を知ることの大切さ

久保秋さんは、1987年にメーカー系ソフトウェア開発会社に入社後、技術者としての道を歩み始めましたが、さらに広い視野を求めて、北陸先端科学技術大学院大学で研究開発に入られました。大学院で情報科学を学ぶうちに、「技術の重要性」と「職場を超えた人との繋がりの大切さ」を深く理解しました。そして、それがこの後に続く苦難を乗り切る原点になっていると感じました。

苦節・修行期間から得られたもの

大学院から復帰したのち、管理者としての役割と技術者としての情熱との間での葛藤が顕著になったそうです。具体的には、「技術の先端を追求することと、人を育てる責任の間で常にバランスを取る必要があった」と振り返ります。また、受託開発では、作りたいものや開発技術についての決定権がないことがフラストレーションになっていました。これらの経験が転職へと繋がり、新たな道を模索する決意を固められました。株式会社アフレルへの転職は、より創造的な環境で自身の技術とリーダーシップを活かす道へとつながりました。

人生を変えてくれたもの

株式会社アフレルでの経験は、久保秋さんにとって2つ目の転機となりました。技術教育教材の開発と講師育成という業務でしたが、受託開発とは異なり、自分の考えをプロダクトに仕立て、それをお客さんに販売するという経験をしたからです。また、好評を受けたことで、その後も様々な教材の開発が増えました。ETロボコン実行委員会への参加もこの時期から始まりました。この仕事を通じて、人に教えることの重要性と喜びを実感し、現在の株式会社チェンジビジョンでも、技術教育の仕事を続けています。

技術者の育成、技術の普及という仕事を通じて、ご自身も技術者・教育者として自己実現を果たされていると感じました。

箱庭との出会いと苦労話

久保秋さんは情報収集としてQiitaやX(旧Twitter)を活用し、日々自身の仕事に役立つ情報をリサーチしています。2018年ごろ、マイコンシミュレータAthrillおよびそれとUnityを接続するシミュレータに関するQiitaの記事(TOPPERS/箱庭デモ ETロボコンシミュレータ)を見つけて、それが箱庭WGとのコミュニケーションのきっかけとなりました。

補足:ちょうどこの頃、箱庭WGでは、久保秋さんにロボットの3Dレンダリングデータの提供について相談していました。

2020年、コロナ禍によりETロボコンの大会開催が危ぶまれる状況に直面したとき、久保秋さんはETロボコンの参加者を巻き込んでシミュレーション環境を整備する提案をしてくれました。そして、TOPPERSの箱庭WGとETロボコン実行委員会との間で本格的なコラボレーションが始まったのです。技術に長けた審査員や技術委員が開発したシミュレータやUnityモデルにより、大会は予定通りに開催され、ETロボコンは一度も中断することなく継続されています。

同時期に、久保秋さんご自身も、大学やトップエスイーの講義で使用していたLEGO Mindstorms EV3を使った実機演習がコロナ禍で実施できなくなる問題に直面しました。この課題を解決するため、箱庭WGと共同で実機をtベースにしたシミュレーション環境を開発し、これにより演習をデジタル化して乗り切りました。

これらの経験は、TOPPERSカンファレンスやSWEST、UMLフォーラムでの報告を通じて、多くの方々から共感を得ることができました。

最後に

このインタビューを通して、改めて教えていただいたことがあります(時代を超えて変わらない大切なことです)。それは、個人の力だけでは成し遂げられないことが多いことと、どんなに優れた技術も、支持してくれる仲間なしでは広まることがないということです。

箱庭の技術をETロボコンに適用する可能性を最初に見出し、具体的なアプローチを提案したのは久保秋さんでした。これがなければ、箱庭の技術は現在のように広く認知されることはなかったと思いますし、とてもすごい偉業だったと改めて思います。

一方で、久保秋さんはいつも気さくで親しみやすい人物です。今年の3月にTOPPERSイベントで東京に行った際には、快く鎌倉を案内してくれました。一緒に美味しいものを食べ、楽しく観光したその時のことは、今でも鮮明に思い出されます。

箱庭の旅はまだまだ続きます。これからも箱庭WGで一緒に頑張っていきましょう!

略歴(久保秋さん)

  • 1987年:大学卒業後、メーカー系ソフトウェア開発会社にて、テレビ会議システム、デジタル複合機、帳票システムの開発に携わる。
  • 1998年:北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程を修了。
  • 2004年:独立系ソフトウェア開発会社に勤務。
  • 2007年:株式会社アフレルにて、教育用LEGO Mindstormsを用いた自律走行ロボットの技術研修教材開発や講師育成に従事。
  • 2014年:株式会社チェンジビジョンにて、モデリングツールastah*のプリセールス、導入支援、教育業務を担当。

その他の活動や役職

  • ETロボコン、ETロボコン 本部モデル審査員(2006年より)
  • MDDロボットチャレンジでは、モデル審査や運営に参画
  • 情報処理学会、日本ソフトウェア科学会、各正会員
  • 日本大学生産工学部非常勤講師(2006年より)
  • 早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科非常勤講師(2009年より)
  • 関東学院大学理工学部非常勤講師(2019年より)
  • トップエスイー講師(2012年より)
  • スマートエスイー講師(2018年より)
  • Certified Scrum Master(2004年)

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