おはようございます!
気づいたら、もう12月。
….え、年の瀬じゃないですか!!
なんか、ついこの前まで夏の汗だくだくドローンデバッグしてた気がするのに、
もう「今年を振り返る」みたいな季節感になってしまって、
なんだか不思議な気持ちです。
で、今朝ふと――というか、突然「ストン」と腑に落ちる感覚がありまして。
「あ、箱庭って 9層構造 でできてるわ。」
と、いきなり分かってしまったんです。
あまりにも自然すぎて、「なんで今まで気づかなかった?」と自分でツッコミを入れたくなるくらい。
箱庭の9階層
普通、「階層構造」と聞くと、
ソフトウェアのアーキテクチャの話かな?と思われるかもしれません。
でも、これは技術の階層ではなく、“創造の階層” なんです。箱庭という世界は、どういう深さから立ち上がってきたのか。
それを言語化したのが、次の 「箱庭の9階層」 です。
| 階層 | 名前 | 説明・例 | 箱庭で言うと |
| 第1層 | 表層 | 目に見える世界 | UI・3D |
| 第2層 | 感情 | 驚き、喜び、・・ | 箱庭の操作体験(箱庭ARドローンとか) |
| 第3層 | 言語 | 理性的に言葉にできる | 箱庭のAPIセット |
| 第4層 | 構造 | 仕組み、アーキテクチャ | 箱庭のPDUや時刻同期 |
| 第5層 | 世界観 | この世界のあらまし | シミュレーションハブ構想 |
| 第6層 | 物語 | なぜこれをやるのか? | 箱庭ラボ日記 |
| 第7層 | 思想 | 生きる意味 | 箱庭の水平統合、技術的主権 |
| 第8層 | 深層無意識 | 言語化できないが突き動かすもの | なぜか週末、箱庭を作りたくなる衝動 |
| 第9層 | 原型・本質 | 単純明快な真実 | 箱庭 |
第1層:表層
まず最初にあるのは、この「表層」です。
ここは、箱庭をご存じの方なら、 誰しもが真っ先に思い浮かべる デモの光景 だと思います。
Unity や Unreal といったゲームエンジンの世界の中で、ロボットが動き、ドローンが飛び、
その3Dの様子が画面いっぱいに広がっている。
いわば、
「箱庭の顔」
「一番上に現れているもの」
ですね。
技術的にも視覚的にも、一番わかりやすい層。
その反面、ここだけ見ていると、箱庭の本質には辿りつけません。
でも、ここから物語は始まるわけです。
人はまず、見える世界から入ってくる——
箱庭も例外ではありません。
第2層:感情
この層は、感情が動く場所 です。
今年の大阪・関西万博で、箱庭ドローンのAR体験デモを行いました。
あの日は本当に忘れられなくて、
気がつけば 5時間ノンストップで150名 の方々に体験していただきました。
とくに子どもたちの反応がすごかった。
ドローンが自分の動きに合わせてふわっと浮き上がる瞬間、
目がまんまるになって、声にならない「わあっ!」が漏れるんです。
あの表情を見たとき、
ああ、箱庭って、人の感情をちゃんと動かせるんだ と感じました。
技術は裏側にあるけれど、
最初に届くのはいつも「驚き」「楽しさ」「不思議さ」といった感情。
その瞬間こそが、 箱庭という世界に人を惹きつける力なんだと思います。
第3層:言語
この層は、箱庭を「開発に使えるもの」にするための層です。
ここで初めて、箱庭という世界は 言葉を持ちます。
つまり、API機能セット群。
- ドローンの姿勢をどう指定するか
- センサー値をどう受け取るか
- 外部システムとどう繋がるか
そうした「やり取りの約束」が、はじめて“言語”として形になる場所です。
感情だけではモノは動かないし、構造だけでは誰も使えない。
その間をつなぎ、開発者が「理解できる言葉」として扱えるようにしたのが、この第3層です。
技術としての箱庭が「社会と会話するための層」——
そんな役割を持っています。
第4層:構造
この層は、箱庭という世界を“動かす仕組みそのもの”です。
ここには、箱庭PDU、箱庭時刻同期、といった箱庭の中枢を担うメカニズムが存在します。
UIやAPIのように目には見えませんが、この層がなければ箱庭は一歩も動きません。
- データがどう流れるか
- どの瞬間に何が同期されるか
- 外界と内部をどうつなぐか
そういった「世界の法則」を決めている場所です。
箱庭を技術として語るとき、 必ずこの層に戻ってくる。ここが箱庭の“骨格”であり、
僕が最初に強いこだわりを持った部分でもあります。言ってしまえば、
箱庭の世界は、この層の上に全部乗っている。
そんな基盤の層です。
第5層:世界観
この層は、なぜ箱庭という構造が生まれたのか、その “世界の前提” を説明するものです。
箱庭は、最初から「1つのシミュレーターを作ろう」として始まったわけではありません。
もっと大きな問いから始まっています。
「もし世界中のあらゆるロボット・センサー・システムがひとつの仮想世界でつながったらどうなるだろう?」
その問いの答えとして生まれたのが、シミュレーションハブ という構想でした。
- ドローン
- ロボット
- 物理シム
- 都市データ
- 通信
- AI
- UI/AR
- 分散システム
これらが “水平につながり”、どれか1つが主人公になるのではなく、世界全体が連動して動く。
そんな「世界観」が箱庭の奥に流れています。
箱庭のPDU構造や時刻同期は、ただ便利な仕組みとして作られたのではなく、
「もし世界がこう動くとしたら」
こういうのが必要って感じなんです。
そして、この層こそが、
箱庭が「単なる技術」ではなく「一つの世界」として立ち上がっていく
最初の分岐点だと思います。
第6層:物語
この層は、
「なぜ僕が箱庭なんてものを引き受けて作らなければならないのか」
という問いに答える場所です。
箱庭は、技術としてはとても説明が難しい。
すぐに伝わるものでもないし、
一言で括れるような種類のものでもありません。
それでも、僕の中にはどうしても
「これを作らなければならない」
という、ほとんど使命感のようなものがずっとありました。
でも、その理由を自分でも言葉にできなかった。
そこで始めたのが、 箱庭ラボ日記 でした。
日記という形で語ることで、
「なぜ僕がこの道を選び、作り続けているのか」
その背後にある思いや背景が、少しずつ輪郭を持ちはじめたのです。
これは、誰かに説明するための物語ではありません。
まず、自分に説明するための物語。
物語がないと、人は前に進めない。僕はそう思います。
だから箱庭ラボ日記は、僕にとって
“箱庭を作り続けるための、内側のエンジン”
なのかもしれません。
第7層:思想
正直に言えば、僕は「思想」なんて大袈裟なものを語るタイプではありません。
ただのエンジニアですし、ずっと技術の世界で生きてきました。
だから最初は、
「思想?そんな立派なもの、僕にあるの?」
と思っていたんです。
でも、箱庭の物語を語り始めたときに気づきました。
そっか、僕はずっと“思想”の上で箱庭を作っていたんだ。
それに気づいていなかっただけなんだ。
箱庭の奥に流れているもの——
- 水平統合
- 技術的主権
- 民主化
これらは後から付けた綺麗な言葉ではなく、僕が人生の中でずっと矛盾を抱えながら、
長い時間をかけてぐるぐる考えてきたものです。
そしてようやく、
「あ、これが自分の中で結晶化した“思想”なのか」
と俯瞰できるようになりました。
気づけば、箱庭はこの思想があるからこそ成立している。
思想があって、構造が生まれ、技術が形になっていった。
箱庭は、僕自身の思想が“かたちを得たもの、”そう思うようになりました。
第8層:深層無意識
箱庭を作り始めた頃のことは、いまでも鮮明に覚えています。
当時は、マイコンシミュレータ Athrill を片手に、 Unity 上のロボットと時刻同期させて、
センサデータをリアルタイムにやり取りする——
そんな “誰も頼んでいない世界” をひとりで作り始めていました。
2018年頃です。
誰も「そんなシミュレーション必要だ」と言わないし、もちろん作ろうとする人もいない。
あれば絶対便利なのに。なのに、誰もやらない。
僕は毎日のように思ってました。
「ぼくは変人なんだろうか?」
「頭がおかしいのか?」
でもね、手が勝手に動くんですよ。考える前に、もう作っている。
説明なんてできません。ただ、どうしても作らずにいられなかった。
そして、2020年。
コロナでオンサイトのロボット競技会ができなくなったとき、
僕が作った技術に、まるで “命が宿った” ような瞬間がありました。
あのとき、胸の奥がスッと軽くなったのを覚えています。
「やっぱり、間違ってなかったんだ」と。
この衝動は、理屈では説明できません。でも、これこそが箱庭の原点なんです。
なぜ?
理由なんてありません。
作りたいと思ったから。
それだけなんです。
第9層:原型・本質
僕には、すごく悩んでいた時代がありました(今でも悩んでますけど、その比じゃないくらい)。
そして、その頃、週末になると、救いを求めて、図書館でユング心理学の本を借りて読みふけっていました。
正直に言えば、内容はとても難しくて、当時の僕にはほとんど理解できませんでした。
でも——
心の奥がざわつく
んです。
言葉にはならないけれど、
「これは自分に関係がある」
という感覚でした。
その中でも、ユングが語った 「原型」 という概念。これだ、と直感しました。
箱庭という発想が突然閃いたとき、
「これがあれば世界がもっと楽しくなる」
と、説明のいらない確信がありました。
あの感覚こそが、原型なんだと思います。
- 理由はいらない
- 説明もいらない
- 誰かに説得する必要もない
ただ、
「これだ」
と感じる瞬間。
それは、すべての原点であり、
人が本質的に持っている“何か”でもあります。
箱庭もまた、その原型から生まれたひとつの形。
本質そのものが姿を見せた、そんな感覚がありました。
でね。
こうして9層なんて偉そうに整理していますが、もちろん最初からこんな風に見えていたわけではないんです。
むしろ逆で、最初はもう、ただの「ひらめき」でした。
つまり 第9層:原型・本質 がいきなり起点になった。
「こんな世界があれば、ぜったい面白い!」
その直感だけで動き始めたんです。
でも、それをどうソフトウェアとして形にすればいいのか?
本当に悩みました。
そこで箱庭WGの仲間と取り組んだのが、
「箱庭プロトタイプを作ってみよう」 という挑戦でした。
あの頃は、アーキテクチャなんて二の次で、
とにかく、
- 第1層:表層
- 第2層:感情
この二つを作ろう!
「箱庭の感動をまず届けよう!」
そんな勢いだけで走っていました。
やがて、作りものが増えるにつれ、
箱庭の“本当の中核”が見えてきました。
それこそが、
- 箱庭PDU
- 箱庭時刻同期
です。
この2つが見えたとき、
「あ、箱庭の骨格はここにある」と確信しました。
でも、そのままでは誰も使えない。
そこで必要になったのが、 箱庭APIセット です。
ここまでが、いわば 箱庭WG時代の成果 でした。
そして、2023年から、僕は箱庭ラボで箱庭を専念し開発しめる始めることになりました。
でもね、箱庭は、作れば作るほどに、孤独という壁が多くなってくるんですよ。
つまり、
箱庭の技術を理解できる人がほとんどいない。
作っても、作っても、作っても、反応がない。
まわりから見ると、
「好きで楽しんで作ってるんでしょ?」
って思われるかもしれませんが、、
でも実際は、 深い孤独と戦いながら作っていたんです。
だからこそ、ぼくは、物語を書き始めた。
それが、「箱庭ラボ日記」なんです。
自分を納得させるための物語。
それが、やがて思想へと昇華していきました。
そして今日、この日。
初めて、箱庭という途方もないものを
“創造の階層構造”
として語れるようになりました。
つまり、ここに来て気づいたんです。
ずっと僕を突き動かしていたのは、
「第8層:深層無意識」にある “衝動” だったんだ、って。
説明できないのに、手が勝手に動く。
理解されなくても、前に進んでしまう。
それは、原型から湧き上がるエネルギーが
裏でずっと働いていたからなんだと。
めちゃくちゃ面白くないですか?
ここまで全部が、ひとつの流れとしてつながった。
最後に、これがそのプロセスを絵にしたものです。

おしまい。

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