前回の記事では、大阪・関西万博という大舞台の“始まり”をお届けしました。
表からは見えない場所で、どれだけの試行錯誤があったのか――
この連載では、そんな仲間たちの努力と工夫、そして静かな格闘の記録を、爪弾いていけたらと思います。
今回は、「バーチャルドローン飛行体験」に少しフォーカスしてみましょう。
準備
これは、「バーチャルドローン飛行体験」をしていただくための機材(Meta Quest 3)のセットアップ風景です。

全部で4台。ネットワーク設定や動作チェックを、スタッフの皆さんと一緒に行いました。
シングルモード
このうち2台は、箱庭ドローンをシングルモードで楽しむためのもの。DITの岡田さんが中心となってセッティングをしてくださいました。Quest 3を装着すると、目の前にリアルな箱庭ドローンが現れ、スティック操作で実際に飛ばすことができます。さらに、スティックでドローンを叩いて吹っ飛ばすこともできるので、思わず夢中になってしまいます。どれだけリアルに感じられるか、来場者の反応がとても楽しみでした。

さらに今回は、外部ディスプレイを1台設置しました。
これは親子で来場された方向けに、お子さんが操縦している視点を、リアルでは見えないドローン映像としてご両親にも見ていただけるようにするためのものです。このディスプレイがあるかないかで、親子の会話がまるで違ってくる。その大切さをよく理解していた岡田さんが、機材の準備を丁寧に進めてくださいました。
ちなみに、岡田さんは、「技術とコミュニティをつなぐ箱庭」でもご紹介させていただいた「ロボットストリート」というイベントで、一緒に、このデモをやってくださった方です。Quest 3を使った箱庭ドローンのイベントにおいては、最も経験豊富で、とても頼りになる存在でした。さらに、実は前の2日(4/26-27)にも、「レジリエンスセッション 震災と未来の神戸博」にて、暑い中、このデモを実施いただいていたのです。

いや、本当にお疲れ様でした。そして、岡田さん、本当にありがとうございました。
ペアモード
そして、次の2台は、ペアでドローンを飛ばせるようにするもの。自分のドローン操縦が他の人にも見えるのです。さらに、相手のドローンを叩くこともできますし、AR空間に置かれた荷物を互いに持ち運びしながら楽しめます。
以前の箱庭ラボのブログ(これが箱庭ドローンが創る未来の遊び場だ!)でご紹介させていただいたものです。
私とJASAの國井さんとでセッティングを行いました。そして、國井さんは今回初体験でした。練習は、2人揃わないとできないので、本番まで持ち越されていたのです。
ネットワーク設定を終えて、國井さんに操作方法を説明し、一緒に動作チェックをしましたが、その風景はこんな感じです。
「國井さん、僕のドローン、この位置にいるんですが、そちらからも見えていますか?」
これが、最初のチェックのやり取りでした。
「はい、そこにいます。」
その言葉を受けて、自分の方でドローンを操縦すると、自分の機体の動きが國井さんのQuest3でも確認できたのか、
「うわ、動いている!」
あとは、お互いのドローンを叩いたり、荷物を運んだりとうまくセットアップできました。
ですが…、 ここでトラブル発生です。このデモを実現するには、Wi-Fiネットワークを6G帯でやらないとリアルな動きの再現ができないのですが、万博スタッフから待ったがかかったのです。会場では2.4GHz帯を使用してくださいとのこと。仕方なく、その設定で再度動作チェックを始めましたが、相手のドローンの動きがカクカクです。
「國井さん……もう、あきらめましょう。」
この一言で、ペアモードでのデモは取りやめとなり、4台ともシングルモードでのイベントとなったのです。
今回は残念な結果となりましたが、きっとどこか別のイベントで、もう一度挑戦してみたい。そんな思いを、そっと胸の奥にしまったのでした。
操作練習開始
セットアップが終わったので、今度は実際にデモ展示をご担当いただくスタッフの皆さんに、操作練習をしていただく番です。

手前で操作されておられるのは、都産技研の吉次さん。今回が初めてのドローン操作体験でした!
そして、奥でピースサインをされている金髪のお兄さんが、D・Aceの高本さんです。このリアクションの面白さは、展示当日も子どもたちに大人気でした。その右におられる方は、今回のデモ展示イベントを事務面で支えてくださったJASAの樋口さん。見えないところで多くの準備を進めていただきました。

右奥でカメラを構えているのは、JASAの三根さん。
英語が堪能で、外国からの来場者の方々に、丁寧に展示の説明をしてくださいました。
中野さんに試してもらった

ちなみに、このQuest 3を使った箱庭ドローン体験、
シアンの中野さんが「ぜひ試したい」とおっしゃってくださり、装着いただくことになりました。
実は、中野さんとはオンラインで少しお話したことがある程度で、これが初対面。
そんな中でも、中野さんの反応は、とても素直で、嬉しいものでした。
「うわっ、すごい!」
「これ、本物の動きと変わらないですよ。」
「ちょっと、大屋根リングの上まで飛ばしてみますね!」
ぼくには、中野さんがドローンをどこへ飛ばしているのか、
正直なところ、まったく分かりませんでしたが……
きっと、あの巨大なリングのてっぺんまで、ひとっ飛びだったのでしょう。
イベント開始
14時、いよいよデモ展示イベントの開始です。この時間帯、私はステージ側にいたため、実は会場でのリアルな様子はあまり見られませんでした。でも、あとからスタッフの皆さんが撮影してくださった写真や映像を見て――
本当にたくさんの方が来てくださっていたんだな。そう、改めて実感しました。Quest3を装着した来場者の方々が、一点をじっと見つめながら、集中してドローンを操縦している姿。その集中した空気が、画面越しにも伝わってきました。

右下の写真では、お子さんが操縦しているドローンの映像が、ディスプレイにしっかり投影されている様子も映っています。この一枚だけでも、親子の体験が“共有されている”空気感が感じられて、私はとても好きな場面です。
ちなみに、ステージでのイベントが終わってデモ展示の方に向かうと、高本さんが何やら不思議なポーズをしていました。左手を大きく横に伸ばして、「ここだっ!」と叫んでいるのです。 「えっ、高本さん……何してるんですか?」と話しかけようとしたその瞬間、ピンときました。高本さんの目の前で、お子さんが一生懸命ドローンを操作していたのです。
どうやらその子は、高本さんの手のひらにドローンを着地させようとしていたのでした。本当に、高本さんって、面白い人だなと思いました。
そのほかにも、来場された方々に向けて丁寧に説明されていた吉次さん、國井さん、岡田さん、三根さん、そして樋口さん。本当にありがとうございました。
想像を超えた反響
14時から19時までの5時間。
スタッフの皆さんは、ずっと立ちっぱなしで、来場された方々のご案内と対応をしてくださいました。
本当に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
「実際、どれくらいの方が体験されたんでしょうか?」と、イベント終了後にスタッフの方に聞いてみたところ――
整理券はすべて完売。
それだけでも十分驚きなのですが、その後も体験希望の方の列は途切れず、もはや整理券の意味がなくなってしまったほどだったそうです。
展示用の4台は、文字通り、5時間ノンストップで稼働。
しかも、デモ期間中はバグひとつなく、安定稼働し続けたとのこと(頑張りやした!)
そして、高本さんが数えてくださっていた来場者数は、
なんと――約150人。
5時間、4台体制で150人。
ざっくり計算すると、1人あたりおよそ10分のペースでの対応だったことになります。
それだけ多くの方に触れていただけたことは、嬉しさと同時に、
スタッフの皆さんの献身的な対応があってこそ実現したものだと、あらためて思います。本当に、お疲れさまでした。
そして ―― 心から、ありがとうございました。
振り返りと気づき
デモに来てくださった方々は、本当に多種多様でした。
元気いっぱいのお子さんたちはもちろん、意外にもお母さん方が夢中になって楽しんでおられたり、外国からのお客さまの姿も見かけられたり。
ドローンを近づけて「叩く」と吹っ飛ぶ演出には、みんな驚いたり笑ったり。
なかでも、高本さんの手のひらにドローンを着地させようとする遊びは、大人にも子どもにもウケていて、現場は終始あたたかい空気に包まれていました。
バーチャル・ドローン体験では、没入する人と、さらっと終える人が半々くらいだった印象だったそうです。 ただ、共通していたのは ―― 年齢や国籍を問わず、“初めての体験”に目を輝かせていたということ。
親御さんが、
「ああ、なるほど、こういうことをしてたんですね」と納得させれる場面でした。
一方で、ディスプレイが1台しかなかったため、
他の親御さんたちは、お子さんの体験の様子を想像するしかなかったかもしれません。今後もしこうした体験を提供するなら、
もう少し“共有のしかた”を工夫したい、そのような思いに駆られました。
最後に
このバーチャルドローン体験が、来場された方々にとって、ほんの少しでも「楽しかったね」「またやりたいね」と思っていただけるものであったなら、これ以上の喜びはありません。
そして、そこに関わってくださったすべての方に、あらためて ―― ありがとうございました。
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