箱庭ラボは、新しいブログシリーズ「箱庭WGのコアメンバー紹介」を続けます。これまでのTOPPERS/箱庭プロジェクトの成功は、一緒に汗を流したチームメンバーのおかげです。今回のインタビューでは、國井さんがどのようにして箱庭プロジェクトに参加することになったのか、その舞台裏を掘り下げてみました。
國井さんのご経歴紹介
國井さんは福島県のご出身で、秋田県立大学で4年間、ハードとソフトを学びながら大学を卒業されました。2003年に卒業後、地元のハードウェア会社でFPGAの設計や基板の作成に2年半携わり、2005年からは株式会社クレスコに入社されました。
最初は、官公庁・自治体向けのインフラ系システムの開発に従事され、その後、携帯電話やデジタルテレビの開発に携わり、組み込みソフトウェア、ミドルウェア、Linuxドライバ、ネットワーク技術のスペシャリストとしてご活躍されています。特に、2009年から2017年にかけてはデジタルテレビの様々な機能開発を行い、多くの経験を積みました。育休期間を経て、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の研究開発にも携わり、Deep Learning、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、トラッキング技術などに取り組まれています。
JASA(組込みシステム技術協会)での取り組みと技術チャレンジ
國井さんは2015年頃から、社外活動としてJASA(組込みシステム技術協会)に参加されました。ちょうど、IoT(Internet of Things)が流行し始めたことがきっかけで、エッジコンピューティングの研究にプライベートで取り組み始めたのです。國井さんがスマートライフWGで取り組んだプロジェクトの一つに、「ハッピーミラー」があります。コンセプトは、「笑う門には福来る」で、笑顔を検出してフィードバックを与える鏡を開発するというものです。
■仕様 (参考資料:https://www.jasa.or.jp/dl/tech/D1-04_emotion-wg2023.pdf)
• マジックミラーの裏にカメラをセットし、カメラを意識させない。
• カメラで笑顔を認識。(数秒間笑顔を作る)
• 笑顔を検出したら、LEDを光らせる。
• 笑顔が数秒間継続したら、スピーカーから⾳声を流す。
技術的には、以下のようなチャレンジや創意工夫があったそうです。
- カメラの配置:マジックミラーの裏にカメラをセットし、ユーザーがカメラを意識せずに自然な笑顔を作れるようにすることが重要でした。この配置には、ミラーの角度やカメラの位置調整が含まれます。
- 表情解析技術:笑顔を認識するために、オープンソースライブラリであるOpenCVとDeepLearningの表情分類モデルを使用しました。OpenCVを用いて、リアルタイムで顔の位置を検出し、顔画像を表情分類モデルで分類し、笑顔を検出する技術を実装しました。ここでは、エッジ側(RaspberryPi)で動作する軽いモデルが必要でした。
- ユーザへのフィードバック:笑顔を検出した際に、LEDを光らせたり、スピーカーから音声を流す仕組みを作りました。特に、笑顔が数秒間継続した場合にフィードバックを与えることで、ユーザーが笑顔を持続させるモチベーションを高めました。
- 精度と再現性の確保:カメラによる表情解析の精度と再現性を高めるために、様々な環境下でのテストを繰り返し行いました。特に、照明の変化やユーザーの位置による影響を最小限に抑える工夫が求められました。
- ユーザー体験の向上:笑顔を作ることが自然に感じられるようにするため、フィードバックのタイミングや内容にも細心の注意を払い、ユーザーが楽しみながら使用できるプロトタイプを開発しました。
ハッピーミラーの開発は、國井さんの技術力と創造力が結集されたプロジェクトであり、多くの技術的挑戦を乗り越えながら、生活の質(QoL)を向上させるための具体的なソリューションを提供しました。このような取り組みは、國井さんがエッジコンピューティングやIoT技術の普及に大きく貢献している証です。
社外活動が新しい道へと続く
國井さんのJASAでの活躍の中で、IoT技術高度化委員会の委員長の交代をきっかけにして、委員長に抜擢されました。そして、新しいIoTの方向性を目指して「コモングラウンド」という名称に委員会名を変更し、活動を本格化させています。こうした研究活動の中で様々な技術者と繋がり、國井さんの技術発信力が高まり、2023年からは7名しかいないクレスコ社内制度のCAS(CRESCO A STARS)メンバーとして名を連ねるに至りました。
箱庭への期待や夢など
國井さんは、箱庭のコンセプトであるシミュレーションハブ、アセット管理、時間同期、オープンソースソフトウェア(OSS)といった要素に大きな期待を寄せています。TOPPERSプロジェクトを通じて、デジタルツイン技術を活用し、多くの人々にその可能性を広めたいと考えています。さらに、コモングラウンド委員会でも箱庭技術を活用し、工場のデモンストレーションなどで実際の応用を検討されておられ、まずは、2024年11月20-22のEdgeTech+2024の技術展示会デモでその成果をお見せすると意気込んでおられます。そして、ここで培った技術をベースにして、ビジネスへの展開を図りたいと語ります。特に、自社のサービスとして箱庭技術を活用し、ロボット系のサービスの立ち上げを目指しています。
最後に
自分が最初に國井さんとお会いしたのは、JASAのオンラインイベントで箱庭の紹介をさせていただいた時でした。オンライン越しにカメラの前にどっしりとお座りになり、さまざまな質問をされていたのが印象的でした。
その後、具体的な取り組みとしてハッピミラーのデジタルツイン化を目指し、箱庭の技術を活用して、表情解析結果をUnity上の色と顔文字で表現するデモを作成されました。
この際、箱庭ではまだ試したことのない技術課題(ラズパイでの箱庭コア機能ビルドなど)にも果敢に挑戦され、週末になるとSlackのDMで問い合わせをいただき、ゴリゴリと開発を進めて一気に作り上げてしまわれたので、國井さんの技術力にはとても驚きました。
國井さん、これからも箱庭デジタルツイン技術を一緒に盛り上げていきましょう!
これからもよろしくお願いします!
略歴(國井さん)
学生時代はシステム科学技術学部電子情報システム学科でHWとSWの両方を学ぶ。
2003年 前職入社、画像処理基板、I/F基板のHW(FPGA)担当として、設計、実装を行う。
2005年 クレスコ入社
2005年~2006年ごろ メンバーとして、官公庁・自治体向け集配信システム開発に従事
2007年~2008年ごろ メンバーとして、携帯電話マルチメディア機能開発の業務に従事
2009年~2017年頃 デジタルテレビ開発の業務に従事。メンバー->サブリーダー->リーダー->PMと役割を変更しながら、Linux Audio、Video、I/FDriver開発から画質制御、AndroidPF開発まで担当範囲を広げながら業務を実施。
2017年~ 2023年 自動運転・ADAS向けセンサフュージョンシステム開発業務に従事。
PM兼技術サポートとして、PF開発やアルゴリズム開発を実施。
2022年~ ETO室長として部門運営を実施
2023年 JASA理事、コモングラウンド委員会委員長就任
※2015年ごろ~ 社外活動(JASA組込みシステム技術協会)を本格的に開始
株式会社クレスコ入社後、携帯電話やデジタルテレビなど、デジタル情報家電の組込みソフトウェア開発を長く経験。現在は、センサフュージョン技術、ADAS(先進運転支援システム)技術の研究開発プロジェクトに従事。同時に、エマージングテクノロジーオフィス室長として、インダストリアルビジネス本部横断の技術サポート、教育を実施している。
また、社内外の技術研究活動にも多く参加しており、JASA以外にもTOPPERSプロジェクト箱庭WGなどで活動中。
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