みなさん、「英雄の物語」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
もしかすると、日本昔ばなしですと、「桃太郎」かもしれません。
SF作品ですと、「銀河鉄道999」や「スターウォーズ」なんかもありますよね。
そして、そこに共通しているストーリー構成は、こんな感じだと思います。
少年は旅にでます。
その旅路には、挑戦・迷い・戦いがあり、そして敗北が待っています。
でも、そこでは、手を差し伸べてくれる仲間との出会いもあるのです。
そして、仲間と共に新たな旅に挑みながら、
少年は逞しくなるのです。
時や場所は違えど、大阪・関西万博出展の舞台裏で協力してくださった方々には、
そんな「物語」があったと思います。
この万博物語集の最終話は、そのお一人 ──
「牧野さん」
に焦点にあてて、2回にわけて物語をお届けしたいと思います。
第六話『バーチャル素材【格闘編】』です。
大阪・関西万博での催事内容
大阪・関西万博出展の舞台裏(その3)でご紹介させていただきましたが、
牧野さんは、TISさんやイームズロボティクスさんとの調整から運営に至るまで
多岐の対応をされておられました。
その中で、以下の企画・検討を行っていただきました。
- 催事1:イームズロボティクスさんとのコラボ催事検討
- 催事2:箱庭ラボ単独の催事内容の検討(東尋坊・バーチャル観光)
どちらの催事も調整も大変ですが、バーチャル体験用のUnityアプリケーション開発が必要でした。
このとき作成されたバーチャル体験用の素材が下図のものです。

画面左が、催事2の方で、バーチャル東尋坊に配置する目標となる看板ですね。
このほかにも、バーチャル観光客もいます。
画面右が、催事1の方で、イームズロボティクスさんの機体(右上)と地上走行ロボット(右下)
をバーチャル素材として作成する必要がありました。
そして、エンジニア魂の牧野さんは、これらにもチャレンジをされていたのです!
一人で抱えるにはあまりにも大きな役割を、それでも自ら道を切り拓いていくお人なんです。
第一の試練:Blenderへの挑戦
バーチャルな素材を作ろうとすると、最初に待ち受けていたのは「CADデータとの闘い」でした。
CADの形式によってはUnityに直接取り込めず、Blenderというツールを経由しないといけないとのこと。
「Blenderって…?」
という状態からのスタートです。
まずはBlenderでCADデータを取り込み、Unityが読める形式に変換しないといけない。
「なるほど、そういうことか。」
さらに調べてみると、BlenderとUnityでは座標の考え方が違うらしい。
「これ、自分にできるかな…」
と不安が押し寄せてきました。

(BlenderとUnityの座標系の違い)
第二の試練:地上走行ロボットの取り込み
Blenderでの対応を試み、Unityが取り込める形式に変換を始めました。
しかし、実際に取り込んでみると、思ったようにはいきません。

パーツ情報やテクスチャの情報が失われてしまうのです(上図)。
そして、どうやら、テクスチャは、自分で作って貼り付けなければならないらしい。
「無理だ…」
と、心が折れかけました。
第三の試練:ドローンの取り込み
未知の領域…。
「できるのか?」
という不安に押し潰されそうになりながらも、
ドローンだけは何とかやり切ろうと思い、諦めずに取り組みを続けました。

最初のチャレンジでは、機体とプロペラのデータを取り込み、左右のプロペラを一つずつパーツにして、
中心を機体側に合わせる作業を繰り返しました。
「地道な格闘の連続です。」

何とか形にはなったものの、やはり座標がUnityのものとは合わない…。
「スクリプトで何とかできるよ」
と教えてもらったものの、どうしても自分の手で座標を合わせたくて、Blenderでの格闘を続けました。
パーツの原点を一つ一つ修正し、形式を変換しながら、ようやくUnityに取り込める形に近づけていきました!
仲間との出会い
Unityのスキル不足を痛感しながらも、学べる場所がなく途方に暮れていたある日、
ふと気づいたのです。社内に、Unityの使い手がいることに!
「Unityおじさん」
「これは、もう弟子入りするしかない!」
そう思い立ち、すぐにコンタクトを取り、正式(?)に弟子入りを志願しました。
イームズロボティクスさんの
「ドローン」や「地上走行ロボット」
をバーチャル空間に再現するためのノウハウ。
Unityおじさんから、いろいろと教えてもらえました。
まさに「いろは」を叩き込まれたのです。基礎から、ひとつひとつ。
そして、地上走行ロボットのテクスチャ問題は、まさにUnityおじさんとの特訓の成果が現れました。
Blenderのパーツ情報を取り込むことができました!

しかし、それでもすべてを解決するには時間が足りませんでした。
テクスチャ問題は最後まで残り、催事直前のタイムリミットが迫ります。
最終的には、箱庭ラボの森さんに地上走行ロボットのモデルをお願いすることになりました。
「役に立たず、すみませんでした…」――
その言葉の裏には、ギリギリまで諦めず格闘した時間が刻まれています。
それは、“敗北”ではなく、“次へのバトン”だったのです。

次回予告:第七話「バーチャル素材【学び編】」
仲間たちとの協力で、牧野さんの挑戦は新たなステージへと進みます。
Unityのスキルアップを少しずつ、ジタバタしながらも着実に身につけていきながら、
東尋坊のアプリケーション開発へと進みます。
そして、そこからの学びや挫折の中にも学びが多くありました。
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