前回までは、箱庭ラボの視点から、大阪・関西万博出展の舞台裏をお伝えしてきました。 ご承知のとおり、この出展は箱庭ラボ単独の取り組みではなく、実に多くの企業・団体の皆様のご協力によって実現したものです。 特に、一般社団法人 組込みシステム技術協会で活動している日立産業制御ソリューションズの牧野様によるご尽力がなければ、この成功はあり得なかったと感じております。 そこで本記事では、牧野様にご執筆いただいた寄稿レポートを掲載いたします。 万博出展に至るまでの数々の連携やご尽力の記録を、数回に分けて、ここにご紹介いたします。 牧野様には、お忙しい中、貴重な記録と想いを丁寧にまとめていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
TISへの提案
箱庭ラボとして大阪・関西万博への出展を提案していたが、残念ながら提案が通らない事態に…そんな中DIT 岡田さんがTISさんが行う万博の催事に何とか提案できないか?と話を繋げてくれました。
2024/6月下旬だったか…TISで万博催事担当している方々との初めてのディスカッションを実施しました。この時点では、箱庭ラボが行いたいバーチャルとリアルの融合体験部分だけをTISさんにお伝えするだけとなりました。
TISからの提案
その後、TISさんから、大阪ヘルスケアパビリオンでの1日限りでの催事に提案しないか?との連絡がありました。 大阪ヘルスケアパビリオンでの催事コンセプトを基に、箱庭ラボとして、バーチャルとリアルの融合体験ができる催事内容を検討を開始しました。
催事に向けたコンセプト検討
大阪ヘルスケアパビリオンの催事マニュアルを熟読し、大阪・関西万博のテーマ「REBORN」に基づき、「Re::Member – 一緒に創ろう」というサブテーマに沿って、人々が箱庭という技術が提供するリアルとバーチャルの融合体験を通して新しい一歩を踏み出し、境界を越えて仲間と一緒に創る体験を提供するような催事コンセプトを考えました。
催事時のコンセプト
障がいがあってもなくても手軽にバーチャルドローン利用した社会参加になるようなコンセプトを考えました。
社会参加の実感:障がいあってもなくても、自分たちが社会に貢献しているという実感を持てる。 存在価値の実感:荷物が観客に手渡される瞬間を通じて「存在価値の実感」という感動を味わえる。 癒し効果の実感:観光地など遠隔地の映像を動けなくなった人に届けることで「思い出」を実感できる。

催事のコンセプト1
催事のイベントを企画は、以下の3つを検討しました。 – 箱庭ドローンによるリアルとバーチャルの融合体験会 – 東尋坊など観光地へのリアル観光体験会 – 箱庭ドローン体験会(ARでのバーチャルドローン体験)
催事対応への課題
コンセプトは考えてみたものの技術面、機材面の課題も多々ありました。
箱庭は、バーチャルでのドローン飛行や荷物の運搬などは実現できていましたが、技術面では、視線操作の実現方法、機材面ではリアル空間で走行する自走ロボットをどうするか?など、様々な課題がありました。
箱庭ラボ単独での対応では、限界があると感じて、様々な会社さん、団体さんへの協力をお願いすることになりました。
視線操作の部分は、過去にお付き合いがあった、株式会社シアンさんにお声がけしました。(視線操作のブログに続く…) 自走ロボットの部分は、JASA経由で、アップウィンドテクノロジーさんにお声がけさせて頂き来ました。(RaspiMouseの催事ブログに続く…)
イームズロボティクスさんとのコラボ検討
2024/8月下旬くらいだったか…TISさんから催事内容についての相談がありました。箱庭ラボ単独の催事ではなく、実機を持っているイームズロボティクスさんとの共同開催をしないか?との提案でした。
イームズロボティクスとの催事コンセプト検討
箱庭ラボ単体ではなく、実機のドローンとのバーチャル/リアルの融合の催事コンセプトを考えることになりました。 イームズロボティクスさん側でも催事内容があるので、催事のタイムテーブルを考えて、催事内容を調整する必要がありました。
イームズロボティクスさんへの最初の提案では、4つの提案をしていたのですが、イームズロボティクスさんの催事内容を考えて、催事内容は2つに絞ることになりました。

催事のコンセプト2
イームズロボティクスさんとのコラボする部分は、シナリオ案1で、実機のドローンとバーチャル空間ドローンが連携するのと、バーチャル空間ドローンが荷物を運び、リアル空間のUGV(自走ロボット)に荷物を届けるというシナリオになりました。
実機ドローン、UGVなどの機材面の課題は、イームズロボティクスさん側で準備してくれることになり、箱庭ラボとしては対応しなくても良くなり、少し肩の荷がおりました。
箱庭ラボ単独の催事コンセプト検討
最初の提案から一貫して変更せず、バーチャル観光ツアーを行う催事内容としました。

催事のコンセプト3
催事にあたっての課題
イームズロボティクスさんとのシナリオでは、バーチャル/リアルをどうやって連携するか?の技術面の課題は残りました。 箱庭ラボ単独でのシナリオでは、視線操作の方法、東尋坊を飛行させてリアルに映像を配信する方法の技術面の課題が残りました。 しかしながら、万博催事事務局に提出する資料が多くあることや、技実際の会場を見てから実現が可能か?、イームズロボティクスさんの実機のドローンの飛行許可が取れるのか?など、事務手続きが多くあり、事務手続き完了を待ってから検証を行うこととなりました。
万博催事の決定
催事の検討はしていたものの、正式にTISさんからの連絡ないままで検討していました…関わる方々も本当にやるの?と疑心暗鬼な状態にもなっていました。そんな中で、DIT 岡田さんの方でTISに確認を頂いた結果、2024/10月初旬ではあったのですが、正式にイームズロボティクスさんとの催事が決定したことが分かりました。
万博催事の顔合わせ会
2024/10月下旬にTISさんが主催する大阪ヘルスケアパビリオンで催事を担当する方々との顔合わせ会が大阪で行われました。 催事運営に関しては、JTBさんが運営することになるとのことで、催事内容に関してと、催事イベントの現地視察結果の報告がありました。
各催事に関わる方々から、催事内容の発表もあり、箱庭ラボとしても発表を行いました。(発表資料の詳細は割愛します。)

催事のコンセプト4
箱庭ラボの基本コンセプトに共感してくれる方も数名いました。これはバーチャルでの活動の励みになりました。(共感してくれた方々への連絡できてなかったです。今後改めて連絡させて頂きたいと思います。)
万博顔合わせ会終了後、懇親会もありました。この万博催事の顔合わせ会で、株式会社シアン 岩井さんと初対面でもありました。(オンラインでは数回打ち合わせは行っていましたが…最近の業態でのあるあるです。)
岩井さんとは初対面とのこともあり、視線操作の方法や、事業内容など催事のことについての深い議論もさせて頂きました。事業内容などでコラボできそうな会社さんともディスカッションを行えて、業界異なる方々との繋がりもできました。
万博協会への説明
2024/11月下旬に大阪ヘルスケアパビリオン催事事務局との実施内容のヒヤリング会がオンラインで行われました。このとき事務局側からの指摘が多くありました。

催事のコンセプト5
指摘内容は大まかに以下でした。
- バーチャルとリアルの融合イベントのイメージが掴みにくい…
- 実機のドローンを会場で飛ばすのは難しい…周辺ならできるかも…
- イベント会場でのUGV(自走ロボット)走行は危険ではないか?
- トイドローンの催事は何のためにやるのか?
といった具合で、イベント全体的な指摘事項が多かったのですが、最終的に提出する催事運営マニュアルにて詳細を記載することで落ち着きました…コンセプトとして、REBORNのテーマにそぐってない部分も指摘されましたが、サブテーマとして、「技術で明るい未来を子供たちへ!」を考えており、様々な体験イベントを通じて、子供たち技術を身近に感じて、将来に繋げる説明を行うことで、ヒヤリング会は落ち着きました。
万博会場視察
2025/1月下旬実際の大阪ヘルスケアパビリオンの視察を行いました。 実際に行ってみると、思ったよりも狭い印象でした…

催事のコンセプト6
電源の位置、ネットワークの位置、ステージ上の光の具合などなど、催事に関わる部分の視察を行い、実際の催事に関わる部分を中心に催事会場の視察を終えました…
JASA単独のイベント検討
大阪ヘルスケアパビリオンの催事会場の視察にあたっては、JASAからの指摘として、何をメインに催事対応するのか?という課題もあったそうです。JASAとしては、ロボット技術を全面に出す方向としたいとのことで、OpenEL WG 中村さんにご同行頂き、現在アップウィンドテクノロジーさんで開発中の水上点検ロボットのイベント可能か?を判断して頂きました。

催事のコンセプト7
ステージ横にある水深では、実際に動かすのが難しい…となり、何か他の手立てを考えなければならないとの結論になりました。
視察終えて、車中、大阪市内を歩きながら、実際に子供たちにロボット体験をしてもらうことが手軽にできそうな、RaspiMouseを使ったイベントをやることになりました。RaspiMouseを使うイベントには、株式会社アールティさんへの許可も必要になるので、別途対応方法を検討することになりました…
催事の運画マニュアル・台本の作成
催事開催の1か月前までに大阪ヘルスケアパビリオンの催事事務局に提出をしなければならないため、2025/02から作業を開始しました。 イームズロボティクスさんとの催事事の台本、箱庭ラボ単独の台本、催事用の動画作成などなどと対応しなければならない事務作業が多くありました。
箱庭ラボで計画していた体験イベントを予定を早めて開始する予定の調整などを行い、催事全体の計画を練り直したりと、来場者の方々に技術の体験を多くしていただけるような計画に変更しました。

催事のコンセプト12
イームズロボティクスさんと協力しながら、台本作成、運営マニュアル作成を行い、2025/4月中旬に提出を完了しました。
台本については、イームズロボティクスさんとは、台本の読み合わせを数回に渡り行いながら、催事当日まで練習を続けました。
催事用の動画
ここが一番難航しました…催事のエンディングロールに使う動画の最後に箱庭ラボに協力してくださった会社さんや団体さんの名前を出したいと思って、動画を作成しましたが、開催2週間前に大阪ヘルスケアパビリオンの催事事務局からのNGが出てしまいました。
何度か修正したのですが、事務局側との会話がうまくいかず、催事の前日に、事務局側の想定が伝えられました。

催事のコンセプト13
事務局側の想定では、赤枠の範囲に留めて欲しいとのことでした…なるほど…と思ったものの、催事の前日は皆さんが移動中のため、諦めるしかない…と思っていたところ、株式会社シアン 岩井さんがバックアッププランを準備していたので、何とか催事当日に間に合うことができました。岩井さんのご尽力がなかったら、催事事態が成立してなかったので、本当に助かりました…前日まで対応してくださりありがとございました。
催事では、協力してくださった会社さん、団体さんの名前を出せず大変申し訳なかったです…ごめんなさい。
万博催事のトピック
万博催事にあたっては、様々な壁がありました。ご協力頂いた方々が一人一人柔軟かつ、迅速な対応を行ってくれたお陰でやり切ることができました。詳細な部分は、別途ブログを作り発信する予定です。
イームズロボティクスさんとのコラボ催事検討
2025/1月下旬に実機のドローン飛行の許可が難しいことになり、催事内容を変更することになりました。

実機のドローンとのバーチャル/リアルの融合部分がなくなり、UGV(自走ロボット)との融合のみになり、バーチャル/リアルの連携についての検討を進めることになりました。

UGVとのバーチャル/リアルの融合にあたっての大きな課題点としては、GCS(地上での制御をするPC)との通信がMission Plannerという通信なため、当時は、箱庭の対応がPX4のみ対応だったので、Mission Plannerの対応をしなければならない点、実際のUGVの位置合わせの情報が必要になる点でした。2025/02初旬のイームズロボティクスさんとの実機での動作確認に合わせて、Mission Planner対応はできものの…GPSの位置合わせが難航しました。結果的には、動作確認はできたものの、万博催事会場での現調が必要になるため、催事でのリスクとなることで、断念…となりました…残念。
箱庭ラボ単独の催事内容の検討
箱庭ラボ単独の催事では、東尋坊側でバーチャルスカイ 上野さんと浪花さんとの連携を行いながら進めました。

詳細は、大阪・関西万博出展の舞台裏(その1)をご覧ください。
視線操作の対応にあたっては、株式会社シアン 岩井さん、中野さんにご協力頂きました。(詳細ブログは、準備中です~乞うご期待!!)
体験イベント対応
ARバーチャルドローン体験、トイドローン体験、RaspiMouse体験と多くの体験イベントを対応しました。

ARバーチャルドローン体験
AR技術を使ったバーチャルドローンが体験できるイベントを開催しました。多くの方に対応頂き、150名以上の来場者の方に体験して頂くことができました。

催事のコンセプト11
詳細は、大阪・関西万博出展の舞台裏(その2)を参照してください。
トイドローン体験
しまなみドローン協会さん、株式会社ozoraさんに対応頂きました。多くの方に対応頂き、100名以上の来場者の方に体験頂くことができました。(現在、詳細をまとめたブログ記事を準備中です。)
RaspiMouse体験
アップウィンドテクノロジー 中村さん、DIT 飯嶋さんに対応頂きました。多くの方に対応頂き、20名以上の来場者の方に体験頂くことができました。(現在、詳細をまとめたブログ記事を準備中です。)
謝辞
箱庭ラボの催事対応にあたっては、多くの会社、団体に協力頂けたこと、朝から晩まで対応となり、本当に疲れたと思います。みなさんありがとうございましたと感謝の言葉しか述べられないことをお詫びします。
最後に、催事で流せなかったエンディングロールを見て頂ければと思います。
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