機体を作る前に、飛び方を試す。
設計仕様と部品データから仮の機体モデルを構築し、制御や飛行特性を試作前に検討する。実機ができたら、測定した値や飛行ログとの違いをもとにモデルを見直し、もう一度検証する。箱庭ドローンPROの機体作成は、モデルを起点に試行錯誤を重ねる開発の第一歩です。
実機ができたら、測ってモデルを更新。
開発の判断を、何度でも検証へ。
作る前に確かめる。作った後も、モデルを育てる。
実機を作ってから初めて飛ばすのではなく、設計段階からモデルを使って検証する。試作・計測後は実機との差をもとにモデルを更新し、次の設計や制御の判断につなげます。
公開仕様や設計値、明示した推定値から機体モデルを構築。部品構成や制御の候補をシミュレーションで試し、次に確かめるべき課題を絞り込みます。
質量・重心・ロータの測定値や飛行ログをモデルと比較。差の原因を調べてモデルを修正し、設計変更や制御改善の検証へつなげます。
x500で今回確認した範囲:公開仕様・推定値からのモデル構築、制御の自動チューニング、PX4・ArduPilot SITLとの比較検証まで。実機の測定値や飛行ログを反映したモデル更新は、今回のx500実証には含みません。
できあがった機体 x500の例 部品の仕様と配置をもとに構築したMuJoCoの機体モデル
メーカーの公開仕様と明示した推定値から生成した、質量・重心・慣性・ロータ特性を持つ物理シミュレーション用のx500モデルです。箱庭ドローンPRO上で飛行制御を試せます。
これは試作前から検証を始めるためのモデルです。箱や円柱で部品を表した物理計算用の簡略モデルであり、実機のCADモデルではありません。
部品は、見た目の形と、質量を担う形を別に持ちます。質量を担う形の体積から密度を決め、合計を部品の一覧の質量に合わせます。 重心と慣性は、MuJoCo が形から計算します(手で入力しません)。結果:重心は機体の中心から前後 −3 mm・上下 −16 mm、 慣性(ロール・ピッチ・ヨー)は 0.0180・0.0190・0.0288 kg·m²。
部品ごとの質量
電池とフレームで6割。電池は機種を決めていないので、一般的な製品の値を使っています。自分の機体では、ここを実測値に置き換えます。
この機体をどう作ったのか? 公開仕様からSITLでの照合まで、6つの工程
部品と出典 すべての値に出典と種類(仕様・推定・一般的な値・仮定)を記録
| 部品 | 質量(g) | 出典 | 種類 |
|---|---|---|---|
| フレーム本体(プレート・アーム・モーターマウント) | 520 | Holybro X500 V2 フレームキット 610 g のうち(脚との配分は推定) | 推定を含む |
| 脚(ランディングギア) | 90 | 同上 | 推定を含む |
| モーター Holybro 2216 KV920 ×4 | 63 ×4 | 販売店の仕様 | 仕様 |
| プロペラ 1045 ×4 | 16 ×4 | 2ペアのパッケージ 65〜70 g から | 仕様 |
| 電池 4S 5000 mAh | 500 | 一般的な製品 480〜556 g(Holybro の推奨 4S 3000〜5000 mAh) | 一般的な値 |
| フライトコントローラー Pixhawk 6C+電源モジュール | 55 | Pixhawk 6C 34.6 g+電源モジュール 約20 g(推定) | 推定を含む |
| GPS Holybro M10+マスト | 50 | M10 32 g+マスト 約18 g(推定) | 推定を含む |
| テレメトリー SiK V3 | 23.5 | Holybro のドキュメント | 仕様 |
| ESC ×4、配電基板、配線 | 60 | 推定 | 推定 |
| カメラ(シミュレーション用) | 12 | 開発キットには含まれない。シミュレーション用に置いた仮定の値 | 仮定 |
| 合計 | 1626.5 | 機体モデルの質量と一致することを、生成のたびに確認 | |
ロータの特性 試験データから Holybro AIR2216II KV920 + T1045II の試験データ(16 V)
推力もトルクも「係数 × 回転数²」で表します。係数は、ホバーに近い帯の試験データだけで合わせる方針です(全域で合わせるより、よく飛ぶ範囲の再現を優先)。
モデルの精度について:ロータの推力・トルク特性は、メーカーの試験データをもとに数式化しています。今回のモデルでは、係数を推定した回転数の範囲と、実際にホバーする回転数の範囲が異なります。ホバー付近の再現精度を高めるには、係数を再推定し、制御の再調整とSITLでの再検証を行う必要があります。掲載している比較結果は、現在のモデル設定に基づくものです。
求め方 式と前提
逆起電力定数 K(モーターの KV 値から)
K = 60 / (2π × KV) = 60 / (2π × 920) ≈ 1.04e-2 V·s/rad
理想的な直流モーターでは、トルク定数(N·m/A)と同じ値です。
推力係数 Ct とホバーの回転数 ω0
T = Ct × ω² (原点を通る最小二乗)
4 × Ct × ω0² = m × g → ω0 = √(m g / 4 Ct)
まず全域で仮の係数を求め、ホバーの回転数を見積もり、その付近の帯で合わせ直します。
トルク係数 Cq
Q = Cq × ω² (推力と同じ帯で合わせる)ロータの慣性 J
J = Tr × (D × R + K² + 2 × R × Cq × ω0) / R ≈ 1.50e-4 kg·m²
ホバー付近で回転の応答を1次遅れとみなした近似です。モーターの時定数 Tr は仕様にないため、小型機の典型値 0.14 s を仮に置き、D(粘性)は 0 としました。 R = 0.115 Ω(モーターの仕様)。今の重さのホバーの回転数で計算し直すと約1.61e-4(7%増)。
最大回転数
ω_max = 9857 rpm × 2π / 60 ≈ 1032 rad/s
試験データのスロットル100%の値。
参照した仕様 メーカーの公開情報(2026年10月に確認)
- Holybro PX4 Development Kit – X500 v2:機体の構成(フライトコントローラー、GPS、テレメトリー、推奨の電池)、ホバー時間
- Holybro X500 V2 Kits:フレームキットの質量 610 g、ホイールベース 500 mm、プレートとアームの寸法
- Holybro モーターの仕様と試験データ(AIR2216II KV920 + T1045II):KV 920、内部抵抗 115 mΩ、スロットルごとの推力・トルク・回転数(16 V)
- Holybro Pixhawk 6C:質量 34.6 g(プラスチックケース)
- Holybro M10 GPS:質量 32 g
- Holybro SiK Telemetry Radio V3:質量 23.5 g(アンテナ込み)
- 電池:一般的な 4S 5000 mAh LiPo(Gens ace 480 g、Overlander 501 g、Turnigy 516 g)から 500 g
箱庭ドローンPROでできること
- 実機を作る前から検証を始められる。設計仕様・部品情報・明示した推定値をもとに機体モデルを構築し、飛行制御や設計候補を試せます。
- 値の出どころを説明できる。質量は部品の合計、ロータは試験データからの当てはめ。推定や仮定の値も、そうと分かるように記録します。
- 部品を替えて、すぐに比べられる。電池やカメラを替えれば、重さ・重心・慣性は自動で計算し直されます。
- その機体で、すぐに制御を調整できる。PX4・ArduPilot の推奨値と推奨範囲で、PIDを段階的に自動チューニングします。
- SITLと照合した土台になる。この x500 は、PX4 SITL・ArduPilot SITL のどちらとも、事前に決めた許容差の内側で一致しました。
自分の機体で始めるには
用意するもの:
- 部品ごとの質量と寸法(フレーム、モーター、プロペラ、電池、搭載機器)
- モーターとプロペラの試験データ(スロットルごとの推力・トルク・回転数)
- モーターの KV 値と内部抵抗、プロペラの直径
- 部品の取り付け位置(組み立て図)
試作機が完成したら、全体の質量・重心・ロータ特性や飛行応答を測定し、モデルとの差を確かめる。実測結果をもとにモデルを見直して、再チューニング・再検証へ進む開発サイクルを想定しています。
この機体は、メーカーの公開情報と一般的な製品の値から作ったもので、推定・仮定を含みます(フレームと脚の質量の配分、配線、電源モジュール、GPSのマスト、電池、カメラ、モーターの時定数)。実機の測定で置き換えることを前提としています。照合の相手はSITLで、実機の飛行データではありません。機体を変えたときは、チューニングとSITLとの照合をやり直します。
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